『グラデーション』1話ー⑥

グラデーション1話 ー ⑥

『グラデーション』1話ー⑥

○ 雨宮陽斗の部屋(夜)
   カオルの家庭教師のアルバイト。
   高校1年生の雨宮陽斗(16)に勉強
   を教えているカオル。

○ 街中 〜 Gradation店前(夜)
   家庭教師終わり、帰路についている
   カオル。
   途中、〈Gradation〉の前で足を止
   めるカオル。
   店の前で、小さく意を決して店内へ
   と足を踏み入れる。

○ 同・店内(夜)
   ショーケース奥には怜央。
 怜央「いらっしゃませ」
 カオル「うわー!」
   ショーケース内のチョコレート菓子に
   目を輝かせるカオル。
 カオル「えっと……」
   商品をなかなか選べないカオル。
 怜央「こちらは初めてでしょうか?」

カオル「はい。店の前はよく通るんですけ
  ど、いつか入ってみたいってずっと思っ
  てて。それで今度アルバイト代が入った
  から思い切って。ごめんなさい、すぐに
  選びます」
 怜央「一ヶ月頑張ったご褒美ですか。素敵
  ですね。大丈夫ですよ。ゆっくり選んで
  ください。何かお聞きになりたい事があ
  れば遠慮なく聞いて下さいね」
 カオル「ありがとうございます……じゃ、
  この抹茶チョコの中身って」
 怜央「はい。ホワイトチョコにほんの少し
   オレンジの……」

○ 同・店前(夜)
 怜央の声「ありがとうございました」
   店の紙袋を持って満面の笑みで出てく
   るカオル。
   そこへ、清が突然現れる。
   イラついた感じの清。
 清「式部さん」
 カオル「あっ」
 清「少しいい?」
 カオル「……いや……でも……」
 清「副部長のことで……すぐ終わるから」
   カオルは疑心暗鬼に囚われたまま、清
   についていく。

○ 同・店内(夜)
   店前のカオルと清の様子を伺っている
   怜央。
 怜央「あいつって……」

○ 裏路地(夜)
   不意に、清に突き飛ばされるカオル。
 カオル「きゃっ!」
 清「(荒い呼吸)」
 カオル「何! 何するんですか!」
 清「何なんだよ、お前はよ。女だろ。スカー
  ト穿けよ、化粧ぐらいしろよ。女だったら
  ……もっと……ちゃんと(更に荒くなって
  いく呼吸)」
 カオル「(くっ)」
   清を睨むカオル。

清「おい、30万だ、30万。ええ、どうすんだ
  よ。これからもずっと続くんだぞ、ずっと
  ……お前が素直に言う事聞いてさえいたら
  こんな事に……」
   地面に倒されたままのカオルに、じわじ
   わと近づいてくる清。
   そこに、清の背後から不意にパトカーの
   サイレン音が鳴り響く。
   驚き振り返った清の目に、スマホを掲げ
   た怜央の姿が目に入る。
 怜央「あなたが有田?」
 清「誰だ!」
 怜央「いや、初めましてなんで言っても分か
  んないと思いますよ」
 清「なめてんのか!」
   踵を返し、怜央に向かって殴りかかる
   清。
   身軽な動きで躱わす怜央。
   勢い余ってつんのめって転ぶ清。
   そのはずみで、清のサングラスが外れ落
   ちる。
 カオル「(えっ)」
   清の右目の異常(失明の痕)に驚くカオ
   ル。
 怜央「素手だったら多分私の方が強いと思う
  んだけど」
 清「てめー!」
   立ち上がる清。
   パトカーのサイレン音が鳴り続ける中、
   怜央は再びスマホを掲げる。
 怜央「あと、パトカーの音はこれだけど、お
  巡りさんは本当に呼んだから。それにほ
  ら、人も見てるよ。いつまでもここにいな
  い方がいいんじゃない」
   パトカーのサイレン音に、何事かと表通
   りから覗いてる通行人たち。
 清「う、うううっ」

 清は耐えきれず、その場を逃げ出し人混
   みの中へと消える。
 怜央「大丈夫?」
 カオル「は、はい」
   怜央に手を添えられなが、立ち上がるカ
   オル。
 カオル「ありがとうございました」
 怜央「ううん……あなたが式部さん?」
 カオル「えっ」
   二人の足元にはカオルのケータイと、
   〈Gradation〉の紙袋が転がっている。

○ コンビニ店内(夜)
   駆け込んでくるカオル。
 店員「いらっしゃませー」
   陰鬱な様子で生理用品の棚の前にくる
   カオル。
   カゴに素早く生理用品を入れ、隠すよ
   うにその上にチョコレート菓子を置く。

○ カオルの部屋・ユニットバス 〜 リビング
  (夜)
   ユニットバスの壁棚には封の開いた生
   理用品。
    ×     ×      ×
   風呂上がりのカオル。
   リビングでチョコレート菓子を摘みな
   がら、PCに向かっている。
 カオル「まずったなー。まさかこのタイミ
  ングでくるとは。少し色々あったからか
  な……」

 (回想)
○ 東翔大・大講堂
   入学式。
   緊張の面持ちのカオル。

○ 駅前・路駐車横
   路駐のワンボックスカーの横で言い争
   う早希と守・太。
   カオルが太の股間を蹴り上げる。

○ カオルの部屋(夜)
   カオルと百合と未憂のお泊まり会。
   3人でピザを食べながら盛り上がる。
   百合と同じベッドでドキドキするカオ
   ル。

○ 裏路地(夜)
   清に突き飛ばされるカオル。
 清「……女だろ。スカート穿けよ、化粧ぐ
  らいしろよ……」
   怜央が助けに来る。
   清の失明した目。
 (回想終わり)

○ カオルの部屋(戻る・夜)
   PC前のカオル。
 カオル「……少し多めに注文しとこ」
   ポチッとネットで生理用品を注文する
   カオル。
 カオル「(ため息)また来月もか」
   カオルはPC画面を変え、検索する。
 カオル「いつまで続くんだろ……」

  PC画面
   〈ホルモン療法について〉
 カオル「げっ、保険適用外って。ありえね
  ー!」
   KOをくらったように仰向けになるカオ
   ル。
 カオル「道は険しー! バイト増やそっか
  なー」
   そのまま腕立て伏せ、腹筋を始めるカ
   オル。
 カオル「うおー!」

1話−⑦へ続く


  

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