『グラデーション』1話ー②
○ 東翔大学・大教室
キャンパス風景
大教室で友人・立花百合(19)、常に
ロングスカートの高橋未憂(19)と並
んで授業を受けているカオル。
未憂「やっば、この授業の本買うの忘れて
た」
百合「何やってんのよ」
カオル「(笑)」
○ 同・学食内
学食で昼食を取る3人。
カオル「ねえ、2人はバイトどうすんの?」
未憂「私は高校ん時からやってるバイトを
そのまま続けてる」
カオル「何やってるの?」
未憂「……飲食関係……カオルは?」
カオル「今、探してるとこ。部活もやって
るから融通の効くとこがいいんだけど」
未憂「で、時給も良くて(笑)」
カオル「もち(笑)」
百合「弓道部だっけ? カッコいいよね、
袴姿。凛々しくて」
未憂「凛々しい? むしろ可愛くない?
女の子の袴姿って。尊みが過ぎちゃうー」
カオル「そうなんだ。小ちゃい頃から見てる
からそんな事考えたこともなかったなー」
百合「親も弓道やってるの?」
カオル「てか、親、神主」
百合・未憂「おー」
百合「まさかの宗教法人」
未憂「神社仏閣の娘がこんなとこに。希少価
値だねー」
百合・未憂「(2人拝みながら)教祖様ー
(笑)」
カオル「もーやめてよ。恥ずいから。
(笑)」
すぐ近くのテーブルには、常にサングラ
スをかけた有田清(22)が食事をしてい
る。
○ 同・弓道部道場
練習風景。
正座で後方から、先輩たちの練習を見て
いる1年生たち。
早希が射場に立ち、弓を引く。
早希の美しいフォームに思わず見惚れる
カオル。
○ カオルの部屋(夜)
引越しの荷物を整理しているカオル。
段ボール箱の一つの中身を確認すると、
ひと思案しそのまま手を付けず隅に置
く。
× × ×
鼻唄を歌いながら料理をするカオル。
× × ×
カオルは、食事をしながら
「僕は?」「私が?」「俺も?」
と、男性一人称を探りながら練習をして
いる。
× × ×
起動したままのPC横で腕立て伏せ、腹筋
をしているカオル。
PC画面には〈……手術……〉の文字。
カオル「ふんっ! ふんっ! 早くバイト見
つけないと! ふんっ! ふんっ! ふん
っ!」
○ 居酒屋外観(日替わり夜)
○ 同・店内(夜)
弓道部新入生歓迎会。
部長「ようこそ我が弓道部へ! 乾杯!」
部員たち「乾杯!」
各種料理、アルコール、ソフトドリンク
が並ぶテーブル。
賑わう部員たち。
サングラスをかけた清がカオルの横にや
って来る。
清「式部っち、飲んでる?」
カオル「あ、はい」
カオルの前にはオレンジジュース。
清「飲んでないじゃーん。オレンジジュース
なんてお子ちゃまだよーん」
カオル「(戸惑う)えっと」
清「有田、有田清。4年の。さっさっ、飲も
飲も」
カオルにビールを注ぐ清。
少し離れた席から、様子を窺っている早
希。
カオル「あ、はい。ビールは来年お願いしま
す」
清「来年?」
カオル「来年、二十歳になるんで」
清「えー、そしたら俺いないじゃーん。い
や、いるか? どっちだー? (笑)」
カオル「(苦笑い)」
清「式部っちは実家?」
カオル「……えっと……それは……」
早希「式部ー!」
カオル「はい!」
素早く立ち上がったカオルは「失礼しま
す」とその場を離れる。
早希「来た来た。みんな、この子が我流で弓
やってたって珍しい子」
他の部員「へぇー」
清「ちっ(舌打ち)」
部長「みんなー! 盛り上がってるとこ悪い
んだけど、酔い潰れる前に集合写真撮っと
かー! ほら、全員集合!」
ぞろぞろ部屋の中央に集まる部員たち。
一方、1人部屋を出ていく清。
撮影者(部員)「はーい、撮りまーす」
満面の笑みで写真に収まるカオル。
○ 怜央自宅外観(日替わり夜)
一戸建ての家。
○ 同・自室内(夜)
明かりの落とされた部屋で、大きめのモ
ニター画面に向かってひとりオンライン
ゲームをしているロングヘアの怜央。
時折チョコ菓子を摘む怜央は、しっかり
メイクをしている。
部屋の一角にはメイク道具一式と、ハン
ガーラックに掛けられている服の中には
数本のスカートがある。
1話ー③へ続く